マリの涙 [今日のシグナル]
国際政治関係のニュースでは、内戦状態に陥ったシリアの話題が連日続いています。アメリカにとって興味があるのはシリア情勢ですから、必然的にそんなニュースばかりになります。
いっぽうで、こんな記事が。
・マリの過激派に制裁を=国連総長(時事)
「国連の潘基文事務総長は8日、安保理会合で演説し、アフリカ西部マリの北部を占領しているイスラム過激派に対する渡航禁止措置や金融制裁を本格的に検討するよう安保理に要請した。
潘事務総長は北部の武装集団が住民の処刑やレイプ、拷問といった人権侵害を行っているとされることに深い懸念を表明。」
マリは、3月に起きた軍部のクーデターによって大統領が辞任に追い込まれ、混乱状態に陥っています。
この混乱の種は、リビアの内戦が絡んでいます。
外務省の情報から引用しましょう。
「2007年4月の大統領選挙ではトゥーレ大統領が70%強の得票により再選されたが,2011年,リビア情勢の変化により同国から帰国したトゥアレグ族兵士らがマリ北部の治安情勢を悪化させたため,マリ国軍が派遣されたが,トゥアレグ族武装集団の勢いは収まらず,このような対応に不満を持つ一部国軍兵士らが2012年3月にバマコで騒乱を発生させた。右騒乱を受けトゥーレ大統領は辞任しセネガルへ出国,憲法規定に従ってトラオレ国民議会議長が暫定大統領に就任した。現在,暫定大統領の下で次期大統領選挙実施を目指している。」
・外務省(マリ共和国)
マリは西アフリカに位置する国。そもそもは比較的安定した国で、大統領も70%という高い支持を受けていました。
いっぽうでマリの北部のサハラの遊牧民トゥアレグ人達は、長い間、反政府闘争を続けてきていました。
そこに、リビアの騒乱が起こります。トゥアレグ人たちはこの戦闘に参加。戦闘経験を積み、カダフィ政権転覆後に大量の武器を持ってマリへ戻り、組織化。今回のクーデターに繋がります。
マリの現状は悲惨で、冒頭の記事にあるように拷問やレイプ、文化遺産の破壊、最近では「不貞の罪に問われた男女を石打ちの刑にかけて処刑」という事件も起こっています。石打ちの刑というと簡単に流されそうですが、これは地面に掘った2つの穴の中にそれぞれ入れられ、石を投げて処刑するというもので、少し想像力を働かせば、“石を投げられて殺される”ということが、どれだけ残酷なものかわかると思います。
この数年、中東・アフリカの秩序は破壊されつくしています。
今回のマリの悲劇を見て、「ルワンダの涙 [DVD]」を思い出します。
<1994年4月6日夜、フツ族出身の大統領の飛行機が何者かに撃墜され、それをきっかけにフツ族によるツチ族虐殺事件(ジェノサイド)が起こる。一夜にして学校はツチ族の何千という難民の為の避難所となった。だが、世界はこの虐殺を黙殺し、治安維持のために派遣されていた国連治安維持軍(UN)は、フツ族に虐殺されるツチ族を助けようとせず、自衛するのみだった。そして国連軍がもうこれ以上難民を保護できないと手を引いた時、ジョーとクリストファー神父は人生最大のジレンマに立たされる。その場所を立ち去るべきか、ルワンダの人々を守る為に立ち上がるべきか。>
この作品は実際の出来事がベースになっていますが、大国の都合による悲劇を繰り返して欲しくないと切に願います。
アフリカの国境は直線が多い。かつての植民地時代の、支配国の勝手な行為による名残です。アラブの春をはじめに、リビア崩壊も、一部先進国の思惑により誘導されています。それにより悲劇の連鎖が起きているのですから、本来であれば責任を取るより他はないはず、ですよね?
2012-08-09 09:38